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正法眼蔵 栢樹子 5

さらに趙州従諗禅師がある時言われた。

考えてみるに全国に沢山いるところの僧侶で、自分が真実に止住しかつそれを保持している様子と同じような状態で、それを実践している人が果たしてどのくらいいるであろうか。寝床といえば土の寝床であり、敷物と言えば破れた葦の敷物である。楡の老木を切って枕にしている。仏像はあるけれども、その仏像に線香さえ焚く事が出来ない。炉の灰の中ではもっぱら牛糞の匂いがする。

趙州従諗禅師の言葉について道元禅師が注釈されます。
趙州従諗禅師の言葉によって、観音院の中における生活の清らかさを知る事が出来る。今日の我々と言えども、この様な過去における実際の業績を学ぶべきである。観音院における僧侶の数は決して多くはなく、20人にも足りなかったと言われているが、これは観音院においての生活が厳しくて中々耐えられなかったからであろう。

観音院においては、僧堂(僧侶が寝起きしたり坐禅したりする建物)も大きなものではなかった。日常生活に必要な設備はなく、入り口には坐禅をする細長い間仕切りもなかった。夜は明かりがなく、冬の寒い日でも炭火とてなかった。61歳で出家を志して30年の修行をしてから住職になった趙州禅師としては、誠に気の毒な老後の生活と言う事が出来る。

過去における真実を得られた方々の生活の仕方はこの様な状態であった。ある時、沢山の僧侶が並んで坐禅をする床の脚が一本折れた。その折れた足を修理する代わりに、燃えさしの木を縄で縛り付けて長い年月を過ごした。そこで寺院の役僧の一人が「ぜひこの坐禅堂の床の脚を造りかえたい」とお願いしたけれども、趙州禅師はそれを許さなかった。沢山の時代を超えても中々見る事の出来ない優れた事跡である。

普段は朝食や昼食の米をほごそうとしても、全く米粒が見当たらないような状態であり、食糧がないために質素な窓にぼんやりと向かい壁の埃を眺めている様な生活であった。ある場合には木の実を拾って、僧侶も趙州禅師もそれをお茶受けとして食べたり、ご飯の代わりに使って多いに活用した。

現代のように遅れた時代に仏道を勉強する人々は、この様な趙州禅師の行いを褒め称えても、とうてい趙州禅師と同じ様な激しい仏道修行はできないけれども、しかし趙州禅師の様な過去における優れた先輩のやり方を慕う事を、その心がけとしているのである。



              ―西嶋先生の話―                               

    --つづき

無我と言う思想がインドにおいて今日と同じ様な形で説かれたのかどうか。確かにインドにおいて仏教が生まれる以前の婆羅門の教えの中にはそういう思想があったようでありますから、古代インドの思想の中に我をなくすと言う考え方があったという事は言えると同時に、仏教の中で特に強調される様になったのは中国に入ってからではないかと考えられるわけであります。

なぜ中国に入ってから無我とか忘我とかと言う思想が強調される様になったかと言いますと、中国では古くから老子・荘子の教えがあるわけであります。この老荘の教えでは無我と言う事を非常に強調する。我々が我と言うものをなくして、自然の状態と一体になる事が我々の最高の生き方だと、こう言う考え方があるわけであります。

この老荘の思想と仏教とが結びついて、仏教の中でも無我というものが強調される様になって、それが日本にも伝わって来て、今日仏教の一つの特徴が我をなくす事にあるんだと言う主張になっているのではないかと、こういうふうに考えられる訳であります。したがってその点では、我というものをなくすという事をただ頭の中で空に考えて、それが仏教の修行の狙いだと考えていくと、仏教を誤解する恐れがあるといえようかと思います。
                           
                             つづく--


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幽村芳春

Author:幽村芳春
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夫と二人暮らし。68歳。自営業。愚道和夫老師が講義された道元禅師著「正法眼蔵」をブログで毎日更新し自宅で朝晩毎日坐禅をしています。師事した愚道和夫老師より平成13年「授戒」戒名 幽村芳春。平成20年「嗣書」授かる。    

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坐禅をしているという事は、足を組み、手を組み、背骨を伸ばして釈尊と同じ格好をして釈尊と同じ心境になっているという事でしかない。坐禅を中心にして、釈尊の思想が時代が変わり場所が変わっても、その場所、その時代に適応するような形でずっと伝わってきている。

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