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正法眼蔵 観音 7

雲巖曇晟禅師と道吾円智禅師の問答について道元禅師の注釈は続きます。

まして十二面観音であるとか、三十二面観音であるとか、三十三面観音であるとか様々な種類の観世音菩薩が説かれているけれども、その様な範囲のものと雲巌禅師の説かれた観世音菩薩とは種類が違う。許多という言葉は「一体どの位の数」という言葉であって、決まった数で限定する事の出来ない無限を表す言葉である。今ここではその無限と言う数を言っているのである。

観世音菩薩の種類がいくつあると言うふうな限定された表現の仕方ではない。その様に種類を限定できないと言うところからするならば、無限という言葉を使ってみても、さらにその無限だと言う限定も乗り越えた大きなものであろう。雲巌禅師がどの位の手や眼を使って何をなさるかと言う表現をされているけれども、その「用許多」という言葉によって表わされる数の本当の意味と言うものはこの様な形で勉強しなければならない。

つまり雲巖禅師の観世音菩薩に関する説明によるならば、観世音菩薩の存在とは無量無辺と言う範囲を更に乗り越えた、この我々の住んでいる世界そのものだと言う捉え方も出来るのである。ここで道吾禅師は雲巖禅師の言葉に対して真実とは無関係だという否定的なことは言わなかった。沢山の手や眼という言葉で観世音菩薩の説明をしようとされたお二人の方々は基本的な考え方がはっきりあるであろう。



          ―西嶋先生にある人が質問した―

質問
正法眼蔵「発菩提心」の巻の自未得度先度他(じみとくどせんどた)というのは、宗教とか教育とかそういう無形の世界だけで言う事であって、普通の経済の世の中に当てはまりますか。

※「自未得度先度他(自分が先に渡るのではなく、まず他人を渡そう)

先生
ええ、そのことは当てはまると思います。それはどういうことかというと、問題を宗教に限定して考えて見ても、人を救うという気持ちのない人は決して自分は救えない。これははっきり言える。だから「俺のために」「俺のために」と思って人間が生きていたら、小さくなってしまってろくな人生は送れない。

これは経済生活でもそうですよ。自分のところに札束をかき集めようという事だけで経済生活をやっておったら、そう大きな仕事はできませんよ。だから経済界で働いている人達というものも、自分の財産を増やそうと思う事だけだったら、決して大きな仕事はできない。その点では、人様のためも考える、社会のためも考えるという事であって、初めて一人前の仕事ができるわけであって、自分の財産だけ積もうと思っていたら一人前の仕事もできない。こういう関係があると思います。

質問
卑近な例で大勢が洪水で流されようとしていて、板子一枚でみんなが漂っている場合に自分はその板を離して他にやりますか。

先生
ええ、そういう場合もあり得ると思います。

質問
それが理想ですか。

先生
理想という事よりも、原則的にこうしなきゃならんという事ではなしに、自分が与えられた境涯のところでどういう道を選ぶかという事を考えた場合、「自未得度先度他」の考え方は当然あるり得るという意味になると思います。

質問
それも判断ですね、その時の。

先生
うん。その時の具体的な判断で法に従って生きるならばどういう生き方をすべきかという、具体的な場面における判断の問題だと、そういう事が言えると思います。

質問
犠牲とは言えませんね。

先生
犠牲になる事が常に正しいという事は決して言えない。もっと綿密に、もっと具体的に、この場面において今どうしたらいいかという問題でしか倫理道徳の問題は考えることはできない。普通はこれが善、これが悪というふうに原則論で決めつけて「あいつはいいやつだ」「あいつは悪い奴だ」というものの見方をするから、本当の意味での善悪とか、道徳とかというものがしっかり掴めないという事情があると思います。


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幽村芳春

Author:幽村芳春
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夫と二人暮らし。68歳。自営業。愚道和夫老師が講義された道元禅師著「正法眼蔵」をブログで毎日更新し自宅で朝晩毎日坐禅をしています。師事した愚道和夫老師より平成13年「授戒」戒名幽村芳春。平成20年「嗣書」授かる。    

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坐禅をしているという事は、足を組み、手を組み、背骨を伸ばして釈尊と同じ格好をして釈尊と同じ心境になっているという事でしかない。坐禅を中心にして、釈尊の思想が時代が変わり場所が変わっても、その場所、その時代に適応するような形でずっと伝わってきている。

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