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正法眼蔵 坐禅箴 17

馬祖道一禅師の「それでは一体どうしたらいいのでしょうか」という問いに対して、南嶽懐譲禅師言う。「人が仮に牛車を走らせている場合に、車がどうしても前に進まなかったならば、車を打った方がよいか、あるいは牛を打った方がよいか」と。

南嶽懐譲禅師の言葉について道元禅師が注釈されます。
ここで「牛車が進まないならば」と言っているが、牛車が進むというのはどういう事なのか、牛車が進まないと言うのはどう言う事なのか。常識的に上面だけの理解でなしに、我々の日常生活の実態に即して、進むとか進まないとかという事が一体どういうものかという事を考えてみる必要がある。

たとえば水が流れると言う事は、牛車が前に進むという事と同じ意味であろうか。水が流れないという事は、牛車が前に進むと言う事と同じ意味であろうか。元来流れるという事は、水が前に進まない事だという事もできるし、水が前に進むと言う事は、流れると言う事とは別だという場合もあるであろう。

水が動いているという事が水が流れていないという事と同じ意味にとり得るという事がある。逆に水が動いていなくても、車がそばを動いていれば、水が流れているというのと同じように見えることがある。

したがって「牛車が前に進まなかったならば」と言う言葉を学ぶに当たっては、牛車が本当に動かないと言う場合も勉強すべきであるし、牛車が動かないなんて事はありえないという学び方もすべきである。なぜかというと、これらの動くとか動かないとかと言う事は、いずれも現在の瞬間における出来事でしかないからである。「牛車が前に進まなかったならば」と言うその言葉の意味は、ただ動かないという事だけを言っているわけではない。

※西嶋先生解説
この辺は道元禅師の思想というものが進んでいたという事の一つの表われ。我々は時間というものを頭において問題を考えるという習慣はわりあい少ない。平面的に理屈の上だけで問題を考えるという事が多いわけでありますけれども、本当の人生というのは時間との兼ね合い。時というものがどんどん、どんどんと流れていくというところにおいての問題であるから、その点では車が進むとか進まんとかというふうな両方の状態があり得る。一方的にどっちだというふうな固定的に考えては、実体そのものが分からなくなる。人生そのものが分からなくなる。複雑なこの世の動きというものが分からなくなる。



              ―西嶋先生の話―
    --つづき

4:道諦(坐禅の立場)
仏道修行をするためには、まず坐禅が仏道修行の中心だという事を道元禅師は言われた。本当かどうかわからないけれども、とにかく馬鹿正直に信じてやってみようという感じで毎日の坐禅をやらない限り、仏道修行は始まらないと言う事情がある訳です。ですからその点では、中々人に勧める事は難しい問題があります。

仏教の立場から言うならば、坐禅をしている時の状態が真実の世界です。坐禅をしていない時の我々が普通に行っている生活は、頭の中でいろんな事を考えたり、感覚的な刺激を受け入れていると言うふうな二つの状態の中で行きつ戻りつしている。これを仏教では、こちら側の岸(此岸)向こう側の岸(彼岸)と言う訳です。此岸というのは真実から少し外れて、何が何だかよくわからないけれども、一所懸命に生きている世界。彼岸というのは真実の世界。

坐禅は、坐禅を長らくやっているといつの間にか向こうの岸に着けると言うものではなくて、坐禅をやっている状態そのものが向こうの岸にいる状態という事である訳です。ですから、坐禅を始めた時から彼岸に坐っている、と言う事が言える訳です。ところが、そういう結構な状態に坐っている事をなぜ人は嫌がるかと言うと、一つには、今までの「自分だ」と思っていたものがどんどん壊れていくと言う事情がある訳です。
                                つづく--


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プロフィール

幽村芳春

Author:幽村芳春
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夫と二人暮らし。67歳。自営業。
自宅で毎日(朝・晩)坐禅をしています。
師事した愚道和夫老師より
平成13年「授戒」戒名は幽村芳春。
平成20年「嗣書」を授かりました。    

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坐禅をしているという事は、足を組み、手を組み、背骨を伸ばして釈尊と同じ格好をして釈尊と同じ心境になっているという事でしかない。坐禅を中心にして、釈尊の思想が時代が変わり場所が変わっても、その場所、その時代に適応するような形でずっと伝わってきている。

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