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正法眼蔵 古鏡 33

雪峰義存禅師の言葉について道元禅師の注釈は続きます。

雪峰義存禅師が「猿が背中に古鏡をそなえている」と言われた。では一体「どんな糊を使用して今日に至っているのか」という質問になるけれども、試しに答えてみるならば、群れをなして動いて行った猿の背中そのものが古鏡(永遠の価値を持った鏡)を意味している。また古鏡は何かと言えば、猿そのものの後ろ姿と言う事も出来る。つまり古鏡というものと猿の後姿とは別々のものではなくて、一つものということができる。

そのことはどういうことかというと、古鏡とは、古鏡そのものである。また猿は猿としての存在であってそれ以外の何ものでもない。その点では、鏡の裏は鏡の裏に他ならないし、猿の裏は猿の裏に他ならないという説明の仕方は偽りや嘘ではない。正しいことを言い尽くした言葉である。そこで一群の猿を目して、猿だと見たらいいのであろうか、それとも古鏡と見た方がいいのであろうかいったいどう表現したらいいのであろうか。

我々自身が猿なのか、我々自身が猿でないのか、このことを誰に聞いたらいいであろうか。人間の知恵には限界がある。自分自身で反省して、こうだ、ああだということがわかるというものでもないし、そうかといって、周りの人がわかってくれるかというと、そうともいかない。結局のところ、自分自身が現に人間として、生きて、毎日生活している実情というものは、手探りで探ってもわからない。自分自身が一体何者であるかという事は、一所懸命日常生活をセッセセッセとやっていく以外に手はない。傍から眺めて「さて自分とは一体何であろか」と考えてみても始まらない。

※西嶋先生解説     
――自分自身が一体、猿なのか猿でないのか、動物なのか動物ではないのか、人間なのか人間でないのか、その辺のところが問題。こういう問題を誰に聞けばいいのか。自分自身に聞くしかない。人に聞いても返事はしてくれない。よく自分の運勢を占い師に見てもらう人がいるが、私は実に不思議でならない。自分にさえわからない事を人に聞いてもわかるはずがない。ただ人間は、自分にわからない事を人がちゃんと教えてくれると思っている。人間は、そういう面白い性質がある。――



               ―西嶋先生の話―
                         --つづき

そういう二つに分かれた考え方がなくなった時には、決断が非常に早い。問題をどう考えようかと思うと、すぐ直観的にパッと答えが出てくる。勿論、その後で判断が正しいか正しくないか、色々と材料を寄せ集めて検討する必要があるけれども、我々の判断とは、色々と長いこと考えた末にやっと出てくるものではなくて、一番最初にどうしたらいいか「パッ」と出て来てしまうものである。そういう、直観的な正しい判断を生む根源を、仏道では智慧と言う。直観的で現実的な判断が、我々の日常生活の基礎であると言うのが釈尊の教えです。この事も我々が日常生活を生きていく上には、かなり大切な事である。

我々の心の中にありがちな善玉と悪玉という二つのものを、一つに重ねてなくしてしまう修行が坐禅という事になる。だから我々が足を組み、手を組み、背骨を伸ばして坐っておる時は善も悪もない状態である。善も悪も無い状態というのは、極めて現実的な世界に生きている状態なのである。その極めて現実的な世界とは、もっと具体的に言えば目の前に見える障子紙、柱、エアコンの回る音、外で聞こえる車の警笛等、極めて単純な世界に我々は生きていると言う事を坐禅をしている時に初めて感ずる。

坐禅をしていない時には、色々な考え方を持って色々な事を考えているから、そういう極めて複雑な世界に我々は生きていると思い込んでいる。ただ複雑な世界というのは、頭で考えた世界であって自分が作った世界なのである。だから、本当に現実に生きておる世界とは別なわけです。我々は現実の世界に生きているのだから、最も現実的な立場で、最も現実的な判断を下さなければならんという問題がある。その点で仏教的な考え方というものは、今後の時代にかなり役に立つ考え方として、我々の日常生活に生きてくる。そう見て間違いないと考えられるわけです。


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プロフィール

幽村芳春

Author:幽村芳春
ご訪問、ありがとうございます。
夫と二人暮らし。67歳。自営業。
自宅で毎日(朝・晩)坐禅をしています。
師事した愚道和夫老師より
平成13年「授戒」を受け、
平成20年「嗣書」を授かりました。    

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坐禅とは姿勢を正してきちんと坐ることである。 姿勢反射が働いて、交感神経と副交感神経とが同じになり、 考え過ぎからくる不満がなくなり、感じ過ぎからくる不安が消える。 実行力が生まれ、やりたいと思う事が直ぐできるようになり、 やりたくないと思う事はやめることが出来るようになる。 自分自身と宇宙とが一体となり最も幸福な人生を送ることが出来る。

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