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正法眼蔵 法華転法華 10

大鑑慧能禅師と法達和尚の問答は続きます。

法達は大鑑慧能禅師の教えに従って理解するところがあったので、踊りあがって喜んだ。そしてその素晴らしさを賞賛し偈(詩)を示して法達言う「自分は経典を三千回は読んできたけれども、大鑑慧能禅師のたった一つの言葉によって、今迄の経典を読んでいた様々の思いというものが一変になくなってしまった。釈尊がなぜこの世に出られたか、我々がなぜこの世に現に出現しているかということがはっきりわからないならば、どうして様々の人生にぶつかって、様々の馬鹿げたことをして、泣いたり喚いたりするということを止めることが出来よう。

法華経の中では、羊の車、鹿の車、牛の車(声聞・縁覚・菩薩)という三種類の仏道修行のやり方に応じた譬えを設けているけれども、しょせん現実の世界においては過去・現在・未来にわたって善を行うことに尽きる。そして我々は火事で今にも焼け落ちそうな家の中に住んで、「ああ苦しい、苦しい」と泣き叫んでいるかもしれないけれども、その泣き叫んでいる本人が実は「宇宙の中の王様である」ということを認識している人がいったい何人いるだろうか」と。

※西嶋先生解説
――こういう話を聞くと「いや、そんな調子のいいことはない。どうも一所懸命いいことやろうと思っても 、中々うまくいかないのが我々の人生で」というふうに感じるのが普通だけれども、実体はそうではない。我々が一所懸命生きている人生は、人から批判の余地がない立派な生き方。誰もがそうだ。 ただ、その事に気がつくかつかないかというだけのことに過ぎない。

善玉と悪玉というものを二つ持って、こっちがいいんだ、こっちが悪いんだと言っているうちは、なかなか自分自身で安心した境地には到達できないけれども、 そういう善玉と悪玉とがなくなってしまうと、ただ一所懸命、日常生活を生きると言う事に徹することが出来る。 それが仏の世界。それ以外に仏の世界というものはない。だから、初めも、中ごろも、終わりも、ただ善いこと、ただ善いことを実行している――

この偈(詩)を大鑑慧能禅師に差し上げた。大鑑慧能禅師は「よし、お前はこれからは経を読むことによって真実に到達した僧と自称してもよろしい」と言われた。



          ―西嶋先生の話―

何回もお話しすることになりますが、仏教という教えは、坐禅と一緒にやるとそう難しい教えではないけれども、坐禅をやらずに仏教を勉強すると途轍もなく難しい教えで、おそらくいつまでたってもわからん教えということになろうかと思います。本屋にたくさんの仏教書が並んでおるので、それを時々買ってみるわけでありますが、仏教という名前がついておるけれども、仏教思想の全く書いてない本が実に多い。たいていの人が小学校以来、西洋の考え方でいろんなものを勉強して、その西洋の考え方を基礎にして仏教らしきものを説いておるという場合がほとんどなのであります。

なぜそういうことが起こるかと言うと、坐禅をやらずに、仏教というものを、文字を通してこうだろう、ああだろうと考えた結果は、かならず西洋流の思想であって、そういう西洋流の思想を仏教だと誤解して一所懸命説いておるという場合が非常に多い。

ところが先日来やっておる「法華転法華」の巻においても、「法華経」の説いておるところというのは「声聞」つまり文字で仏道を勉強しようとする人々、あるおいは「縁覚」と言って、山などに入って靜かな境地で仏道を勉強しようとする人々、また社会生活の中でいろいろ努力して、その中で仏教をつかもうとする「菩薩」というふうな三種類の仏教の勉強の仕方ではなしに、直接仏の世界に入ってしまうということ、つまり一乗経が仏道を勉強する唯一最大の道だということが「法華経」という経典の中で説いておることである。
                               つづく--


読んでいただきありがとうございます。


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プロフィール

幽村芳春

Author:幽村芳春
ご訪問、ありがとうございます。
夫と二人暮らし。67歳。自営業。
自宅で毎日(朝・晩)坐禅をしています。
師事した愚道和夫老師より
平成13年「授戒」を受け、
平成20年「嗣書」を授かりました。    

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行持の巻に入りました。この言葉は「いまといふ道は、行持より先にあらず、行持現成するを、いまといふ」と示されているところから見ると、保持、持続という事の意味が、時間的継続と関係の薄いところは明らかであり、むしろ持とは宇宙秩序の保時、戒律の保持という意味が強いと解される。そこで行持とは梵行持戒、すなわち正常な行為と戒律の保持を省略した言葉と解される。

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